教員が出版した発刊本の紹介

トランスジェンダーと現代社会――多様化する性とあいまいな自己像をもつ人たちの生活世界

著者 石井由香理

発行年 2018年

価格 3,850

目次

はじめに

序章 性別越境概念とその社会的意味づけ

  1. 現在国内で流通する性別越境概念
    1・1
    医療概念としての「性同一性障害」
    1・2
    「当事者概念」としてのトランスジェンダー
    1・3
    同性愛との違い
    1・4
    異性装者
  2. 性別越境についての国際的な動向と歴史
    2・1
    近代社会における性別越境の抑圧と性科学の台頭
    2・2
    性の脱アイデンティティ化と脱医療化の動き
  3. 日本における性別越境概念の変遷
    3・1
    近代化以前
    3・2
    明治から1990年代まで
    3・3
    性別越境の医療化と人格化
    3・4
    特例後の状況と脱医療化
  4. 本書の構成

第1章 独自化する自己像とライフストーリー

  1. 二元的ジェンダー観と自己像との間で
  2. 「性同一性障害」概念とカテゴリー化
  3. 調査の概要
  4. 3人の語りから見えてくるもの
    4・1
    既存のアイデンティティ表象に同一化されない自己像
    4・2
    カテゴリーへの同一化を試みた時期
    4・3
    当事者との出会いと既存のカテゴリーに重ならない自己の受容
    4・4
    予定調和ではない未来
  5. ずれの中に構築されるアクチュアル・アイデンティティ
  6. 認識の変化が及ぼす影響

第2章 医療言説における揺らぐジェンダー概念と再帰的自己

  1. 多様性尊重言説は人々にどのような作用をもたらしたのか
  2. 新しい性別越境概念の登場と医療化に対する反応
  3. 「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」の分析
    3・1
    初版
    3・2
    第2版
    3・3
    第3版
    3・4
    第4版
  4. ガイドラインの変遷から見えてきたもの

第3章 「性同一性障害」カテゴリーと非当事者の関係性――当事者団体の活動に着目して

  1. 当事者の自己像と他者像
  2. 性同一性障害当事者運動の現況と自己像の変遷
    2・1
    当事者運動の現状
    2・2
    カテゴリーからのずれをもつ自己像と他者
  3. 分析方法・対象
    3・1
    団体Qの概要
    3・2
    交流会L
  4. 多様化する当事者像と非当事者の関係性
    4・1
    団体Qの主催者にとって「性同一性障害」とは何か
    4・2
    本質主義的なジェンダー観をもつ他者像と当事者の多様化した自己像
  5. 当事者が背負おうとするもの

第4章 当事者演劇におけるジェンダー・イメージの変遷

  1. 「抵抗」からクイアへ
  2. 分析対象と方法
  3. TPの性に関する意識はどのように変遷したか
    3・1
    第1回公演
    3・2
    第2回公演
    3・3
    第3、4回公演
    3・4
    第5回公演
    3・5
    第6回公演
  4. 自己像と他者像の変遷

第5章 トランスジェンダーの子どもをもつ親の語り――受容と関係性再構築をめぐって

  1. トランスジェンダーの子と親との関係に見られる特質
    1・1
    トランスジェンダーと多様性言説
    1・2
    親とジェンダー規範
    1・3
    親の性差
  2. 調査内容及び対象者
  3. 子の受容と多様性言説
    3・1
    子どもの性を受容するまで
    3・2
    親と子の関係性再構築
    3・3
    性の多様性言説の親への影響
    3・4
    母親と父親の関わり方の違い
  4. 親の語りからみえてきたもの

第6章 多様性言説と新しい主体

  1. 「多様性」について考えるために
  2. 脱真理化する性
    2・1
    近代社会と性の真理
    2・2
    性の真理の脱構築
    2・3
    ポストモダニティにおける性からの脱埋め込み
  3. 新たな性の作用と多様性言説
  4. 多様性言説の議論の水準
  5. 性的人格からの撤退がもたらすもの
  6. 親の語りからみえてきたもの

あとがき

初出一覧

文献