国際化時代の人間形成を追求する研究活動
人間形成の学問ともいえる教育学は、人の成長・発達に関連するすべての事象を研究対象とし、そうした諸現象を思想、歴史、社会学、心理学、比較、実践、政策といった多様な視点から考察し、意義づける総合的学問です。
教育学専攻では、
「教育哲学、日本教育史、教育社会学、学校教育学、教育方法学、 学校臨床社会学、国際教育学、国際教育開発学、比較教育学」の9つの専門領域を研究する教員が、理論と実践の両面にわたって研究を行いながら、国際化時代に求められる現実科学としての教育学を究めています。
在籍者の多様性
本専攻には、計40名の学生(博士前期課程:20名/博士後期課程:20名)が在籍しています。中国、フィリピン、ミャンマー、ベトナム、ヨルダン、マラウィー、ウガンダ、ナイジェリア、オーストラリア、米国、カナダといった国々からの留学生・研究生の他、社会人も在籍しており、共に学び合いながら、それぞれの研究に従事しています。
教育学専攻 3つの特色
教育の根源を問う
人間の尊厳を追求する立場から、教育に関する根源的・本質的な諸課題に対して、日本ならびに諸外国の歴史的、哲学・思想的な知の蓄積に基づき、積極的に対峙し、探究しています。
国際的な視野に立つ
グローバル化する今日の多様な社会における教育の理念的・実践的なあり方に関して、欧米諸国のみならずアジア諸国や開発途上国の経験を取り込みながら、国際的な視野のもとで研究・教育に取り組んでいます。
研究と実践を架橋する
教育学の社会的な意義や今日的な役割について多角的に考察するとともに、研究と実践を架橋することを目指しています。
教育学専攻での学び
博士前期課程(修士号取得を目指します)
教育分野における社会貢献や人間支援を目指して実践・臨床の場で活躍できる高度職業人ならびに研究者の育成を目的としており、そのための確固たる意志と資質をもった人材であれば、学部時代に教育学を専門に学んだ者に限らず、他領域の卒業者であっても幅広く受け入れます。また社会人入試を実施し、現職教員ならびに社会人に対する教育・研究支援を行うほか、留学生の受け入れも積極的に行っています。
博士前期課程(修士)では、大学院生の専門分野に応じて、研究の基礎的資質を育て高めることを重視しています。指導にあたっては、特殊研究分野に偏ることがないように8領域全体に目を配り、多面的に研究方法が修得できるように配慮しています。また、2年次の春学期には修士論文の中間発表会が行われ、主査の教員のみならず、全ての教員から助言を受けることが出来ます。修士論文の質を着実に高める絶好の機会となっています。
本専攻の院生は、課程修了の要件として、30単位(1科目2単位が標準です)を取得します。教育学専攻では、各専任教員が担当する「講義」や「演習」科目に加え、それぞれの領域に関連する内容を扱う「特殊講義」も開講し、専門性を有する学外の講師を招いて授業を行っています。どの科目も少人数制であり、きめ細かな指導が行われるのが、本専攻の特徴です。また、教育学専攻の科目に加えて総合人間科学研究科の他専攻(社会学や心理学など)の科目や、8単位まで他の研究科の科目を履修することが出来るため、学生の多様なニーズにあったカリキュラムを組むことが出来ます。
教育学専攻では、グローバル時代の人材育成ニーズにも応えています。例えば、2016年度から、国連大学(United Nations University)が提供する科目(貧困や環境問題など)を2単位まで履修することが可能になります。また、教育の国際的側面を扱う科目の中には英語で開講しているものもあります。論文については、英語で作成することも可能です。語学力強化や異文化体験、海外での情報収集のために、上智大学の交換留学制度を活用することも出来ます。さらに、多様な学びの機会を提供するという観点から、海外の大学の教員を招聘することもあります(2016年度春学期には、ボスニア・ヘェルツェゴビナ国から異文化間教育・平和教育を専門とする教員を招きました)。
博士後期課程(博士号取得を目指します)
研究者として教育学の領域における幅広い学識を有し、人間の尊厳の理念および社会のさまざまな事象についての情報収集力、柔軟で多角的な思考力・分析力を身につけ、かつ研究論文をまとめる力量、教育実践力・指導力の基礎を獲得した人材を育てます。
教育学専攻では、博士論文執筆のための「研究スケジュール」を作成し、3年間で博士号を取得するための道筋を示しています。博士論文作成に向けた研究においては、専任教員3名からなる指導委員会を設置し、学位取得までの一貫した指導を行います。学生は、「研究スケジュール」に従って研究を進め、指導委員会による研究指導を受けつつ博士論文を完成させます。また、研究者としてのスキル向上のために、学術誌への投稿や学会での発表に向けた細やかな指導も行います。2009~11年度には各1名、2012年度に2名、2014年度に2名、2017、2018年度に各1名、2021年度に1名の博士号を授与しました。
*上智大学大学院 教育学専攻の履修についての詳しい情報は、「大学院履修要綱」で確認出来ます。履修要綱は、大学のホームページの「学生生活」タブから確認できます。
卒業生の進路
上智大学教育学専攻(大学院)の卒業生は、民間企業、公的機関(自治体、中央官庁等)、教育機関(学校等)、その他(NPO・NGO等)、多様な分野で活躍しています。傾向としては、人と向き合う仕事やグローバルな仕事を選んでいます。
近年の卒業生の進路例(大学院)
- 民間企業:
- ベネッセコーポレーション、等
- 公的機関:
- 国際協力機構(JICA)、日本赤十字社、等
- 教育機関:
- 中・高等学校教員、大学講師、等
教員紹介
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相澤 真一
教授
教育社会学
教育社会学
教育と社会の関係に焦点を当てた教育社会学の研究をしています。もともと、日本の学校教育の平等性について文書資料を用いて歴史的に研究してきましたが、社会変動を計量的に位置付けることを行うようになり、計量分析を並行して進めてきました。さらに、日本の教育政策を海外と比較するためのインタビュー調査を国内外で行ってまいりました。現在は、これらの手法を総合化して、比較歴史社会学の研究として、日本の近代化と教育の関係を捉えようとしています。
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上野 正道
教授
学校教育学/教育哲学
学校教育学/教育哲学
学校教育学と教育哲学・思想史の研究をしています。特に、学校、学び、アート、シティズンシップ、民主主義などをめぐるテーマについて、教育の思想と実践をつなぐ視点から研究しています。もともとの研究テーマは、アメリカの学校改革と公共性の思想史についてですが、最近はヨーロッパや東アジアの教育に関心をもっており、それらを比較しながら検討することを目指しています。大学院では、教育・学び・学校についての思想と実践を往還しながら、現代の課題にアプローチする方法を探っていきます。
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小松 太郎
教授
国際教育開発学
国際教育開発学
開発途上国における教育政策・教育行政・学校運営、紛争後社会の教育と社会的結束・平和構築、グローバル時代の教育制度の同質化と多様性、市民性教育に関心を持っています。これらのトピックや課題に、主に社会学・政治学の諸理論、定量・定性・混合調査手法を用いて、アプローチしています。開発途上国や紛争後社会の教育開発、国際教育協力のあり方について一緒に探求しましょう。
*大学院における担当科目は全て英語で実施しています。
最近指導した院生の論文
- Challenges Facing English Teacher Training in LaoPeople's Democratic Republic-A Study of the Faculty of Education at the National University of Laos
- ベリーズのガリフナに焦点化した学校におけるエスニック・アイデンティティ形成についての事例研究―多文化教育における戦略的本質主義アプローチへの示唆として―
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酒井 朗
教授
学校臨床社会学
学校臨床社会学
格差の拡大やグローバル化の進展する現代社会において、子どもの成長や学習をどのように保証すればいいかという問題関心に基づいて、不就学や不登校、高校中退などの問題を教育臨床社会学・学校臨床社会学の観点から研究しています。また、近年では、それらの事象を社会的排除と包摂の観点からとらえ直すとともに、問題に対応するための学校段階間の接続や学校と諸機関との連携という実践的課題にも関心を持っています。方法論としては質的方法ならびに構築主義的な言説分析を用いており、スクールエスノグラフィーや、教師や児童生徒等を対象としたインタビュー調査、メディアにおける教育言説の分析などを手掛けています。
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杉村 美紀
教授
国際教育学
国際教育学
国際教育学は、国際関係と教育の関係性を探究する分野です。グローバル化や国際化に伴い移民、難民、国際結婚、外国人労働者、留学生など人の移動が活発化し、多言語、多宗教など社会の多文化化が進むなかで、教育機会の保障をめぐる多文化教育の問題に注目しています。また、国家の枠組みを越えて地域機構や国際機関等が展開するトランスナショナル教育や、文化交流や国際連携の動きを、比較研究の手法を軸に分析しています。教育が生み出す国際競争と協調の可能性を、様々な国や地域の教育政策の事例を通じて共に考えてみましょう。
*大学院における担当科目は全て英語で実施しています。
最近指導した院生の論文
- 公立学校に通う在日外国人児童生徒の教育に関する学校外の支援―K県の三つの自治体における在日ペルー人家庭の事例―
- 「多様性の尊重」に着目した国際理解教育の授業分析と生徒の意識変化に関する研究
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奈須 正裕
教授
学校教育学
学校教育学
学習と動機づけに関する心理学的な知見を足場に、主に小学校の授業とカリキュラムのあり方について、学校現場と連携して現に実践を「つくりながら考える」というアプローチで研究してきました。最近の関心は、コンピテンシー・ベイスという新たな地平から教科教育や生活教育を問い直すことで、子ども中心と学力の高度化という2つの要求を調和的に実現する方途を理論的・実践的に模索することに向かっています。
最近指導した院生の論文
- 地域コミュニティの形成と、それを支える子ども観について―海士町の教育を通じて―
- 「総合的な学習の時間」のカリキュラム開発と教師の力量形成に関する研究
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湯川 嘉津美
特別契約教授
日本教育史
日本教育史
日本幼児教育史の研究を手掛けています。今日、日本の幼児教育は大きな転換期を迎えており、幼保の一体化・一元化の問題はもとより、幼児教育の無償制や義務制、保育者の養成と待遇をめぐる問題など、検討すべき課題は数多く存在しています。こうした問題を考える際に、歴史研究は有用な示唆を与えてくれますが、それには歴史的事実についての確かな認識と過去から現代の問題を見通し、把握する力が必要になります。大学院では幼児教育史のみならず、幅広いテーマで歴史的検討を行い、史料の扱い方など教育史研究の基礎を培うと同時に、現代の問題を見通し、把握する力を養成します。
最近指導した院生の論文
- 大正・昭和初期における文化教育学の受容とその実践
- 近代日本の幼稚園における保育実践研究の展開(博士論文)
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鈴木 宏
准教授
教育哲学
教育哲学
個人の道徳性の陶冶に関わる道徳教育から人類の平和に寄与する平和教育まで幅広く視野を広げ、教育の本質とは何かを教育哲学、教育思想史の観点から研究しています。これまでは、ドイツの哲学者イマヌエル・カントの思想を教育学の立場から読み解き、その現代的な意義について研究してきました。最近では、カントの平和論や歴史哲学に焦点を当てて、これからの時代に求められる平和教育の原理について探究しています。
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Maria MANZON
Associate Professor
Comparative Education
Comparative Education
My main research interest is in a globally inclusive histories of comparative education. This means an open dialogue across cultures, spiritualities, languages, and intellectual traditions. I am interested in exploring the unique contributions from Asia, especially in relation to women’s ways of knowing, parental involvement, spirituality and values, and moral purposiveness in comparative studies in education.
入試情報
*必ず、上智大学HPから最新の入試情報を確認してください。
*入学を希望される方は、指導を希望する教員に事前に相談することを強く勧めます。
教育学専攻についての問い合わせ先
教育学科(教育学専攻)事務室
上智大学 四ツ谷キャンパス2号館14階
電話:03-3238-3650
E-mail:deducat@sophia.ac.jp
意欲のある方の挑戦をお待ちしております!