学部長挨拶

「総合人間科学」という言葉から、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?
人間の生き方、心の働き、社会とのつながり、ケアやソーシャルワークのあり方――そうした多様なテーマが頭に浮かんだ方もいらっしゃるかもしれません。それこそが、私たちの学びの出発点です。

世界はようやく新型コロナウイルス感染症の影響から立ち直りつつあります。しかし、戦争によって奪われる命、今もなお続く貧困や格差、そして差別や偏見によって傷つく人々の存在など、グローバル化や情報化が進む中で、世界が直面する「困難」は一層複雑さを増しているように見えます。

これらの困難の根底に共通して関わっているのが、「人間の尊厳」というキーワードです。

上智大学総合人間科学部は、5つの学科から成り立っています。アプローチはそれぞれ異なりますが、すべての学科に共通するのは、「人間の尊厳」、あるいはそれを脅かす問題に向き合おうとする姿勢です。

上智大学の教育精神「For Others, With Others(他者のために、他者とともに)」は、「他者」という大切な言葉を含んでいます。現実の「他者」と真摯に向き合い、寄り添うためには、多様な視点と深い理解が求められます。その中心にあるべきものこそ、「人間の尊厳」なのです。

そのために私たちは、「科学の知」「臨床の知」「政策・運営の知」という三本の柱を軸に、現代社会のさまざまな困難に立ち向かう教育と研究を進めています。
総合人間科学部の学びの特長は、各学科での専門性を深めながらも、「人間の尊厳」という共通のテーマに対して多角的にアプローチできる点にあります。異なる視点を学び、組み合わせ、互いに照らし合わせることで、新たな発見や深い洞察が生まれます。

世界の課題に目を背けず、深く、しなやかに学び続けたい方。人々のケアや支援のあり方を見つめたい方。誰もが尊厳をもって生きられる社会づくりに貢献したいと願う方。そんな皆さんに、ぜひ総合人間科学部の扉をたたいていただきたいと願っています。

私たちとともに、未来を拓く学びを始めましょう。

総合人間科学部長 田渕 六郎